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写真展「フィリピン 路上のパレット」を開催します。


今年の4月フィリピンを訪問、路上で暮らす子どもたちを取材しました。

フィリピン取材をまとめた展示を9月14日から開催します。



国境なき子どもたち(KnK)写真展

「フィリピン 路上のパレット」 撮影 関 健作

2023年9月14日(木)~20日(水) 10時~18時

会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」

〒160-0022 東京都新宿区新宿1丁目4−10 アイデム本社ビル

会期中の9月16日(土)には、アナウンサーの渡辺真理さんを司会にお迎えし、ギャラリートークを行います。

興味がある方はこちらのページをご覧ください。



2023年4月、私はフィリピンの首都メトロマニラを訪れた。KnKからお声がけをいただき、路上で暮らす子どもたちを取材することになったのだ。彼らは物乞いやゴミ拾いなど簡単な商売をし飢えを凌ぎながら生きている。

私は彼らに「自分」をテーマにしたペイントワークショップを2度行った。1度目は彼らに自画像を描いてもらうもの。2度目は私が撮影した彼らの写真の上に絵具で「自分自身」を表現してもらうものだ。ワークショップでは最低限の説明にとどめ、彼らを観察することに重点を置いた。結論から言うと、ワークショップはその当初の目論見とは違う、圧倒的な衝撃を私にあたえた。アートを通して彼らの内面を表現してもらおうという浅はかな思い付きなんて、すぐに蹴飛ばされた。路上に置かれたパレットには躊躇なくチューブから絵具が絞り出された。絵の具は水で薄められることもない。筆は洗われることなく、色から色へと移動していく。

「そんなに絵の具は出さないで」「また使えるようにとっておこうね」「筆は洗いましょう」

そんな言葉をかける大人は彼らの周りにはいなかったのだろう。そもそもストリートに住む彼らに何かをストックしておく場所なんてない。むき出しの自分が今という現場にただただいるということ。私には違和感とも恐怖ともいえない、そんな底知れない何かが湧き上がってきていた。絵の具がごちゃごちゃに混ざりあい、全部の色が全部と重なり出し切られた刹那の色合い。フィリピンの路上の子どもたちが使ったパレットは彼らそのものであり、私の知らなかった何かだった。

KnKフィリピンが運営する「若者の家」という施設でも同様のワークショップを行った。「若者の家」には過去に路上で生活していた子どもも暮らしている。ここでは空腹に苦しむことも、他のグループに襲撃されることもない。勉強に励むこともスポーツで楽しむことができる。大人たちが彼らを24時間体制でケアする。私は「若者の家」の子どもたちから安らぎと奥ゆきを感じた。

路上に生きる子どもたちの表現、「若者の家」で保護された子どもたちの表現。この二つの間にあるものはなんなのか。彼らはむき出しの表現で私たちに問いかけてくる。


写真家 関 健作


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