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  • 関健作

教え子イシ・ドルジとブータンの留学生たち


写真:教え子Yeshi Dorji(イシ・ドルジ)彼が住むアパートの前で 写真展開催でこの5日間は大阪に滞在していた。昨日、ぼくが体育教師をやっていた時の教え子、イシ・ドルジが展示を見にやってきてくれた。彼は現在大阪に住んでいて、日本語を学びながらアルバイトをしている。日本にやってきた理由は、写真家になるという夢を実現するためでもある。写真展終了後、彼が今どんなところに住んでいるのか気になり、部屋におじゃまさせてもらった。

写真:いつも移動には地下鉄を使う

一昨年からブータン政府の取り組みで、留学生を日本に送り出すプログラムがはじまった。

日本に滞在でき、日本語学校で学びながらアルバイトで稼げるというもの。もうすでに500人以上のブータン人が日本にやってきている。イシも来日できるチャンスだと思い、申し込んだそうだ。 このプログラムは無料で参加できるものではなく、旅費と学費のローンを組む。日本にきてアルバイトをしながら、そのローンを返していくことになる。まだ日本語がうまく使いこなせない彼らができるアルバイトは給料がよくない。そのため月々の支払い、家賃、食費などを引くと手元にほとんど残らず、貯金することは難しい。

このプログラムが始まった背景にはブータンの失業率の問題がある。

大学まで進み、卒業する学生の割合は年々増えているが、学歴を獲得したとしても、若者たちが希望する仕事は非常に枠が少ない。そのため、近年首都ティンプーには仕事を得られず、ずっと就活中状態の若者が急増しているのだ。

問題の打開策として政府が始めたのが、若者たちを日本に送り出すこのプログラムだった。 憧れの国、日本に留学できる!しかもアルバイトができ、働く経験を積むことができる。そして稼ぐことができる。ブータンの若者たちにとっては魅力的なプログラムに聞こえた。

写真:最寄り駅からアパートへの道。自転車はブータン人の友人に借りたもの。イシも購入したがすぐに盗まれてしまったんだとか。

ブータンの若者たちが抱く日本の印象はとてもよい。

日本はアジア一の先進国、給料がいい仕事がある、夢を掴むチャンスがある。

そんなイメージを持ち、期待に胸を膨らませ彼らは日本に来日する。

写真:イシが住んでいるアパートからの風景。

イシもその一人だった。

彼らが日本にやってくる直前、ぼくは首都ティンプーで彼とばったり再会した。

その時の彼は目を輝やかせ、日本行きが決まったこと、日本でやりたいことをワクワクしながら語ってくれた。その姿がとても印象的だった。

現在イシは大阪に住んでいて、彼を含め51人のブータン人が同じアパートで暮らしている。

昨日、彼の部屋へお邪魔すると、6畳ほどの小さなワンルームに3人が暮らしていた。

写真:イシの部屋。一緒に住むルームメイトと。

昨年の10月に来日したので、ここにきてもう4ヶ月になる。

イシは前回会ったときより目の輝きがなくなっていたし、活気を感じることができなかった。

この4ヶ月で、彼がイメージしたドリームカントリージャパンのイメージは崩れ去ってしまったらしい。とにかく想像していた日本とはかけ離れていた。

日本語の学校へ通いながら、片道2時間かかる神戸の工場に勤務をしている。

彼が行っている仕事は、1日じゅう携帯電話の部品組み立て作業。

複数のアルバイトを紹介してもらえるそうだが、日本語があまりできない彼ができる仕事は、工場の流れ作業だった。

工場に配属されて衝撃的だったのは、日本人が働いていなかったことだそうだ。

管理者以外、ベトナム人か、ネパール人。そしてイシたちブータン人だ。

日本で日本人が働かない職場を目の前にしたとき、イシはブータン国内のことを思い出したと言う。

現在、首都のティンプーは建築ラッシュに沸いている。建設現場で働いているのは、ほとんどがインドから出稼ぎに来ている労働者だ。ブータンの若者は肉体労働はやりたがらない。

その理由はプライドと安い給料。肉体労働はインド人労働者がやる仕事という認識しているし、昔から彼らを見下す風潮がブータンにはあった。

イシは話す

「ブータンにいるときは、インド人労働者のことなんて深く考えたことなかった。

日本に来て、今はぼくがインド人労働者の立場になっていることに気づきました。

日本の人たちがやりたがらない仕事をぼくらがやるんですね・・・」

写真:イシの部屋。彼の持ち物。

工場では外国人労働者が一言もしゃべらず、黙々と作業をこなす。作業は単純ですぐに覚えることができる。ただ、何よりも辛いのはコミュニケーションがないことだ。

バイト中はずっと黙って作業をしなければならない。それが彼らにとって、想像以上に苦しいことだった。ブータンの人々コミュニケーションが大好きだ。おそらく日本人の倍くらい会話をしているんじゃないかって思う。

彼らは一人でいることが嫌いで、とにかく会話を楽しむ。人に会えばたわいもない話に花を咲かせ、時間をやり過ごす。ブータンでは人とのコミュニケーションが最大の娯楽と言える。

写真:ブータン人はどんなときでもお茶を出してくれる。これは午後の紅茶・ミルクティーに砂糖をたっぷり入れたもの。

だからこそ、このギャップに苦しむブータン人は多い。

毎日目の前のベルトコンベアーに流れてくる、無機質な部品たちと格闘する。毎日の通勤は往復4時間。電車では疲れた目をした日本人の顔を見る。疲労がたまり、休みの日は何もする気になれないそうだ。彼らはもう4ヶ月もいるのに、日本語のレベルはあまり上がっていなかった。過去に日本で暮らしたブータン人を何人かぼくは知っている。彼らが口々に話していたことは、「ここ(日本は)人との関わり」が少なすぎるってこと。過去にうつ病を発症し、帰国したブータン人もぼくは知っている。

その反面、日本を楽しみ、日本が大好きになって帰る人もいる。彼らの特徴は、日本人の友人をつくっているということ。友達が増え、それと並行して日本語もうまくなる。どんどん交流が生まれ、好循環に入れるかどうかが鍵だ。

写真:夕食づくり。白菜を手でちぎり、このあとチーズとたっぷりの唐辛子で煮込む。彼らの元気の源は激辛料理だ。

すでに何人かの仲間がドロップアウトしてブータンへ帰国したそうだ。先ほども話したが、彼らは日本にくるためにローンを組んできている。途中で帰国してしまう人は、ブータンの平均的な年収で換算すると、一生懸命働いても返済に10年以上はかかるんじゃないかっていう借金を背負わされてしまうことになってしまう。だから貧しい家で育った子は後がない。

多くの人は「あまい!それくらい普通だ!我慢して働け!」って思うだろう。

でもぼくはブータンのライフスタイルを知っているので、彼らのことを他人事とは思えない。

想像してほしい、のんびりした国から忙しい国へ。人とのつながりが大切だった国から知ってる人がいない孤独の国へ。異文化に飛び込む不安の大きさに大小なんてないんだけど、やっぱりギャップの大きさは凄まじいものがあるに違いない。

ぼくはブータンに3年間暮らした。そして帰国後、すぐに教員になった。

胸の中のモヤモヤを無視して働いていたら、3ヶ月で胸の奥に激痛を感じるようになり、咳が止まらなくなった。半年たったとき、このまま働き続けたら「死ぬかもしれない」と直感した。だからぼくは仕事をやめた。言葉では説明することが難しいけれど、それくらい精神的な負担があるのだ。

日本へ働きにきて、笑顔をなくして日本が嫌いになって帰ってしまうブータン人を見てきた。イシの目からも輝きが少しずつ減っている。昨日も彼の口から弱音がポロポロと出てきた。

彼らの話しを聞いていて、なんとかしたいと思ったし、せっかく日本にきたのだから、好きになって帰ってもらいたいとも思った。

写真:イシが寝るベット。ルームメイトと2人でひとつのベットを使う。もう一人は床で寝るんだとか。部屋にはタンカ(仏画の掛軸)が飾られていた。日本に来ても仏教の祈りは欠かせない。

この現状を知ってほしいし、理解があれば協力をお願いしたいと思っています。

休みの日に「日本語を教えてもいい」「一緒に遊んでもいい」「ブータン人とコミュニケーションしてみたい」「一緒に写真撮影したい」という人いませんかね?

ぜひ彼らに日本語でコミュニケーションをする場をつくりたいと思っています。 何かいい方法がある方、アドバイスください。

facebookグループなど交流できる場ができたらまたお知らせします。

3月にイシと東京でイベントを開催します。

東京でもイシとつながりを持ちたいという方はイベントに参加してくださいね。

「標高高い系フェス!」

■日時

2018年3月24日(土)12:00〜16:30(11:30開場)

■会場

モンベル渋谷店5Fサロン

詳細はこちらから↓

webページ:

http://gnhtravel.com/archives/5331182.html

facebookページ:

https://www.facebook.com/events/407209489734284/

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【写真展情報】

2017年第13回「名取洋之助写真賞」受賞作品 写真展

会期

2018年2月22日(木)まで!

時間

10:00~19:00 (最終日は16:00まで/入館は終了10分前まで)

場所

富士フイルムフォトサロン 大阪 

〒541-0053 大阪府大阪市中央区本町2−5−7 メットライフ本町スクエア (旧 大阪丸紅ビル)1F

https://www.fujifilm.co.jp/photosalon/osaka/

ブータンの社会問題を切り取る

OF HOPE AND FEAR

関健作写真展

▼東京

会期:2018年3月28日(水)〜4月3日(火)

会場:銀座ニコンギャラリー(東京都)

時間:10:30〜18:30(最終日は15:00まで)

休館日:日曜

URL:http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/salon/events/201706/20180328.html

▼大阪

会期:2018年4月26日(木)〜5月2日(水)

会場:大阪ニコンギャラリー(大阪府)

時間:10:30~18:30(最終日は15:00まで)

休館日:日曜

URL:http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/salon/events/201706/20180328.html

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